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	F1で巡りあった世界の空。山口正己ブログ

自動車メーカーがモーターレーシングに貢献すべき理由

◆クルマは走って楽しいものとして誕生した。自動車で競争するモーターレーシングはその最も中身の濃いクルマが活躍する場である。そこにクルマという媒体を提供するのが自動車メーカーの業務である。まず、この基本形を理解しておきたい。

◆一方で、自動車会社にとってのクルマは、ビジネスのアイテムである。慈善事業ではないので、売れてナンボという基本は崩せない。だが、日本の基幹産業である自動車を送り出す自動車メーカーが、それだけでいいの?という話だ。儲かるクルマも結構だが、売れるけれど味気ないクルマだけでなく、楽しめるクルマもちゃんと残してね、ということである。

◆自動車メーカーのすべてがモーターレーシングに貢献する必要はないかもしれない。けれど、モーターレーシングから何らかの恩恵(宣伝に使ったり、参加したり)を得ようとするなら、貢献するのはバランスからして当然の義務だ。お世話になるなら何らかの代償なりお礼をするのは、クルマの世界に限らず常識。日本の自動車メーカーは、いつからかその思考回路が欠落してしまった。いや、これは自動車メーカーの責任というより、大きくなった”会社組織”の実情、といった方がいいかもしれないが、会社のことを優先して自分の保身を保つことに邁進するサラリーマンにモーターレーシングをやってほしくない。なかでも、F1は特にそれを強く思う。

◆F1やルマンでは、辞めるときの理由として、「投資に見合わない」とか、「わが社の目指す方向と違う」という勝手な理屈を堂々と会社の代表者が発言し、それを間違っていると誰も言わなくなった。「投資に見合わない」のではなく、「見込みが甘くて無駄な投資をした」のだ。「わが社の目指す方向と違う」なら、最初から出るな、と言いたい。つまり、調査不足による経営の失敗を参加した世界のせいにしている。別れた彼女の悪口を言っているようなザラザラした気分にさせる大きな勘違いだ。

◆逆に、尊敬を得たいなら貢献すべき、といういい方もある。例えば、ジャガーも、ポルシェもメルセデスもBMWもアウディも、アルファロメオもルノーもプジョーも、もちろんフェラーリやロータスも、なぜ”ある種の尊敬というか仲間としての意識”をユーザーにもってもらっているかといえば、それは、ただ単に売れればいい、という思考回路ではなく、自分たちがほしいと思うクルマを提供し、”道具を提供する”という部分でモータースポーツ(自動車競技に限らず、スポーツドライビングまでを含む)という名の遊びに貢献しているからだ。少なくともそれに供するに足るマインドもしくはポテンシャルをもつ素材、つまりクルマを提供している。儲かるクルマだけ作ればいい、と思っていない。

◆だからといって、自動車レースの場がクルマを鍛えるとも思わない。大昔のルマンなら、切れないランプや長持ちするタイヤに自動車レースが貢献したが、今ではそうした期待はほぼできない。だが、参加する意義は大いにある。例えば、F1は、”整理整頓世界選手権”であり、そこで勝つためには、ハイレベルなマネージメントが必須だから、そこで育った人材のノウハウをビジネスに投入することは有意義だろう。

◆そもそも、モーターレーシングはお金持の遊びとして始まった、というバックボーンもある。お金がある人は高級車も買ってくれるが、自社のクルマを買ってもらいたいなら、その”遊びに道具を提供することからはじめるべきだ。遊び道具を造ってくれる仲間、と思われることで信頼感が生まれる。

◆レクサスがいまいち確たる人気を得られていない(と私が感じる)のは、本格的にモーターレーシングをやっていないからだ。単に性能がいい、というのは説得力が足らない。レクサスLFAは、カーボンシャシーなのに、補強のためのパイプが存在しているというが、それが事実なら、そういうレベルではモーターレーシングの世界では通用しない。トヨタがF1で8年間勝てなかったのは、そういうレベルでしかモノを考えられなかったからだと私は思っているが、そのノウハウを蓄積して、これから、というときに撤退を発表した。まさに無駄遣いをしたのだ。挙げ句に、責任者が、「F1はエリート主義で我々が目指す方向とは違う」と仰る。顔を洗って出直してほしい。

◆実際、その”性能”を、競争の中で証明もしていないのでは説得力も弱くなる。ましてや、社長が自分で楽しむために造っているうちは、効果は期待できない。いまは第一段階だというならそれはありだが、客である不特定多数に提供して、例えば、ポルシェのように、買ったそのままの状態でルマン24時間に出られるくらいの性能とサービスを徹底して、そこで初めて”仲間”と認められる。自動車がビジネスのための媒体でしかない、というのでは尊敬される自動車メーカーにはなれない。

◆例えば、ルマン24時間を見ると、日本のメーカーは、都合のいいところで 出て行って、自分たちの事情だけで引っ込んだりの繰り返し。他のメーカーもそうした出入りはあるが、日本のメーカー、特にトヨタの場合、貢献の前に”自分の都合”が優先されるイメージが強い。しかし、ポルシェやアウディ、プジョーなどは、経済状況で参加の方法やスタンスは違うが、まずはイベント(ここではルマン24時間というお祭り)を盛り上げることをきちんと考慮し、そうしてイベントを盛り上げておいて、そこで勝つのである。もっとも、そうして、クルマやモーターレーシングに理解が深いはずの欧州企業でも、最近は担当者のサラリーマン化が進んで、その理屈から外れる場面がみられるのはなんともはやだが。

◆ともあれ、そうして貢献した恩恵、もしくはお返しとして、宣伝効果を得る、というのが正しい順番だ。日本の自動車メーカーは、ルマンでもF1でも、一部を除いて貢献を感じられる例が少ない。利用しようとしているだけでは、信用は培われない。

◆だから自動車メーカーは、乗った瞬間にスーパーマンになれる、というクルマという媒体を造るなら、走って楽しいという基本を忘れないでほしいと思う。ならば、その傾向が最も顕著に出る自動車レースに対して、貢献するのは当然の義務であり、自動車で儲けた者の”余裕”である。余裕があって初めて尊敬される。自動車レースを宣伝やイメージ創りに使いたいなら、その世界に貢献して尊敬されることを最初に、そして最後までやるべきだ。

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