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バッシングって、何だ?!

◆先週、岡山国際サーキットで行なわれたWTCCのサポートレース(フォーミュラBMW)で、日本人二人(中山雄一と桜井孝太郎)が失格になった。失格の理由は、デフの規定違反。しかし、規定通りではなかったことで違反には違いなくても、性能が上るどころか、むしろ下がることになる変更だったことから、議論を呼ぶことになった。

◆これを”日本人バッシングだ”という見方もあるが、もう少し深い視点がありそうだ。

◆当事者である16歳の桜井孝太郎が、「日本人バッシングにずっとシーズン中にあってきていた」、というとある記録がある。

☆レース中に後方から接触され、ウィングの迎角が1度狂った。
⇒ゴール後に失格。

☆予選3番手だった次戦。
⇒いきなり最後尾スタート/接触での原因を作ったとして3グリッドダウン。

「勝てるチャンスをことごとくつぶされてきていた」、と言うのがチーム関係者のイメージ。

☆岡山のデフ。
デフの内部のランプという、デフの効き始めやかかり方を調整するバーツの組み付けに関するクレーム。F3なら何十種類もあるパーツだが、フォーミュラBMWはワンメイクで、パーツそのものは一種類のみ。角度設定で、たとえばブレーキ開始時に何%、アクセルオン時に何%と、アクセルのON/OFFによってデフの効きが変化する。ワンメイクのフォーミュラBMWの場合、左右のパーツを組み違えたとしても、ほぼ同じ角度で優れたドライバーですらその変化に気づかないと言われる。しかもBMWが組み立てて封印しているようなもの、という。

<蛇足>中山雄一と桜井孝太郎は、第1レースは失格になったが、ドライビングパフォーマンスには影響なしということで、予選中のセカンドタイムで決まった第2レースのグリッドは、そのまま有効という奇妙な判定になった。

<オマケ>失格の時に競技長とチームが揉めたが、その争点は、「インターナショナル・ルールに則って、抗議料及びペナルティの支払いは現金でユーロのみ」だったこと。日本円は受け付けないと言われても、岡山の周辺環境からして、日本円換算約30万円のユーロを持っている方がヘン?!

ちなみに桜井孝太郎の場合、チーム構成メンバーは、マレーシアとフィリピンと日本、なので現金は、円かリンギッドかペソしかなかった。「抗議する気にもなりませんでした」、というのがチーム関係者の証言。

BMWの責任者が、中山雄一からメシあげた優勝トロフィーを、繰り上がり優勝した桜井孝太郎のチームメイト(ここも、人生の皮肉)のリチャードに渡したが、受け取ったリチャードは、即座にそのトロフィーを持ってARTのピットで中山選手に、「これは君が実力で獲ったものだから、君が持ってかえるべきものだよ」と渡した、という”いい話”が生まれた。

◆さて、”ジャパン・バッシング”という表現は、そもそも正しいのだろうか。その昔、ホンダの桜井淑敏監督は、当時FIA会長だったJ-M.バレストルと議論になった時に、最後に、「黄色い猿の自由にはさせない!!」と怒鳴られた。バッシングというより、日本人のそもそものポジションが、「人ではなくて猿」ということ だ。

◆アイルトン・セナが、レース以外に”闘っていた”のもそこだった。セナの場合、あまりにストイックになりすぎた、という見方もあるけれど、”バッシングだ”と口を尖らせるのではなく、”すでにそういうポジションである”ということを理解した上で、何ができるか、を考えた方がいいかもしれない。

◆例えば、可夢偉は、夏ころまで、イギリスのBBCで、クソ野郎呼ばわれされていた。しかし、力を見せたことで、解説のマーティン・ブランドルも認めざるを得なくなり、いまでは、一目おかれる存在になった。特にイギリス人は、一端リスペクトすると、その路線を徹底的に守ることで知られる。

◆去年、可夢偉は、GP2でいろいろと”バッシング”を受けた。テストで、ルノーから”エンジンの確認”と言う名目でチームはエンジンを返還したが、戻ってきたエンジンは、明らかにパワーダウンしていた。さらに、去年のGP2シーズンは、体重が軽いと重量配分的に不利、と解釈できる規則であり、それは”可夢偉潰し”のためだったと取れないこともなかった。しかし、可夢偉はそれを一度も口に出すことなく、日本人の立場を理解した上でじっと耐え、淡々と”仕事”をこなした。「僻んでも始まらない。力で勝負」ということだ。むしろ、そこで耐えた経験が、ザウバーで生きている、とも。

◆F1は、ハンドルの回し方の巧さを競っているのではない。総合力として、どこの国の出身かどうかは無関係に、すべての与えられた条件の中で何を成すか。可夢偉の口癖は、だから「大事なのは結果なんで」なのだ。もちろん、ここで言う”結果”とは、レース結果だけでなく、「世界のレベルでどこまで存在を認めさせるか」という結果である。

◆日本人であることを僻んで”バッシング”というのではなく、だったらそれを跳ね返して勝負してやろうじゃないか。可夢偉は、口には出さないが、そう思っているに違いない。

◆中山雄一も、桜井孝太郎、グローバルな舞台に出るための、これは試練だ、と「ありがたく」受止め、精進して、いつか奴らをギャフンと言わせてほしい。まぁ、言うだけの外野は楽ちんだが。

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