木曜日のピットを見れば強さが見える
F1見物は、木曜日から始まる。スケジュール開始前日の木曜日には、ピットをゆっくり見て歩く。スタッフの人数や作業の動きが微妙な違いが伝わり、どのチームが明日から始まるレースをどう戦うのかが、手にとるように分かるからだ。
特にシーズン開幕戦を控えた木曜日のピットは、その傾向が強くなる。例えば、2006年の開幕戦、バーレーンGPのスケジュール開始を19時間後に控えた木曜日の夕方5時。各チームの様子はこんな感じだった。
ルノーとマクラーレンとフェラーリの3チームは、どれも数人がピットの中で談笑しながらゆったりと最後の調整をしていた。さすがトップチーム。日本人としてちょっと嬉しかったのは、ホンダのピットが、トップ3と同じような雰囲気だったこと。ただし、シーズン前のテストで好調を伝えられていたもう一つの日本チームであるトヨタは、26人のスタッフがせわしなくピット内を行き交い、時折エンジンをかけて調整するなど、慌ただしいムードがあった。
果たしてレースの結果は、1-2フィニッシュのフェラーリにホンダが続き、ルノー、マクラーレン、ホンダがトップ6を占めた。木曜日の夕方5時に余裕のあったチームが上位に来たわけだ。対照的に、せわしないピットの様子が見てとれたトヨタは14位と17位。木曜日の状況がそのまま投影された結果だった。
綿密なスケジュール管理と、そこへ向けて集中していくこと。それが強いチームの必須条件。整理整頓ができて初めて勝負ができる。
だから、特にシーズン開幕戦の木曜日の”ピット散策”は外せない。第2戦以降も、レースを楽しみにするために、木曜日の夕方の”風景”は、要チェックなのである。F1が『整理整頓世界選手権』であることが、そこで証明される。