F1/モータースポーツ深堀サイト:山口正己責任編集

F1/モータースポーツ深堀サイト:山口正己責任編集 F1 STINGER 【スティンガー】  > F1に燃え、ゴルフに泣く日々。 >  >     エコは、確かに大事だが、運転は楽しいものである。

	F1で巡りあった世界の空。山口正己ブログ

エコは、確かに大事だが、運転は楽しいものである。

◆昼食はラーメンに決めた。ツイッターの影響でラーメン食うとは思わなかったが(笑)、八王子の初富士はやっぱ「サッパリおいしい」。ここでURLを紹介した『ラーメン・データベース』の初富士評は、おどろくほど深く精確で、思わず唸った。”麺固めがいいかも”という意見は見事にズッポシ。なので、別のラーメン屋でこの方のオススメを食ってみたくなった。

◆おいしいものをいただいて元気になったので16号バイパス経由で厚木。国政さんのオリジナルボックスで運転座学。受講生は東大のフォーミュラ・ファクトリーのドライバー担当者と、オリジナルボックスに集るドライビングに熱心な仲間たち総勢15名。東大の学生は、彼らが活動する学生フォーミュラのアドバイザーである草加浩平(といえば古いラリーファンならこのナビを知らない人はいない)先生が、運転の仙人と呼ばれる国政久郎さんを紹介、クルマ作りに邁進しつつ、運転の重要性と楽しさ、勘どころを伝授いただくのである。

◆運転講座じたいは、前々から教えていただいていた話なので、感動もほどほどだったが、国政さんの、まるで彼の仙人的運転のごとき、圧倒的効率で一段ずつ解説を重ねていく話の展開の巧さに加えて、ここに来たおかげでもうひとつの発見ができた。

◆講義終了後に草加先生(センセイというよりナビの方がしっくりするが)から、アリャマなデータを伺ったのだ。「最近、クルマ離れがはなはだ顕著。ここ数年間、入部者が激減している」なのだそうだ。

◆集った学生は、東大のサークル35人の中の数人だったが、学生フォーミュラの報告書を拝見して、”部員数”を見て思った。”自動車部で35人は、自動車もすてたもんじゃない”と。しかし、彼らは自動車部ではなくて”フォーミュラ・ファククリー”。草加先生によると、「いわばロボット・コンテストの延長で、クルマというよりモノ創りに興味がある学生」とのことだった。それはそれで、そこをキッカケにクルマが好きになってもらえばいいと思ったが、どうやらそうとも:言い切れないらしい。ここ数年の部員減少を草加先生は、「リーマンショックの直後なので、その影響が大きいと思う」とのご説。その時はなるほど、あるかもですね、と答えたが、帰りにつらつら考えた結果、愕然とする”別の可能性”に気がついた。

◆最近のクルマのテレビCFは、ハイブリッドだ電気自動車だと、クルマの楽しさをすっかり放り出してエコか減税しか伝えていない。特に国産メーカーは、その傾向が強いと思うが、実は、これが、クルマ好きを減らし、部員減少の元凶かもしれない、と思ったのだ。

◆勘違いしないでほしいが、電気自動車やハイブリッドに反対しているのではない。要はほどほどに、目先のことだけでなくバランスを考えてほしい、ということだが、その”ほどほど”を遥かに逸脱して世をあげてのエコ流行りだ。しかし、そもそもクルマは、燃料が爆発するエネルギーが背中を押して、人類の能力を遥かに越えるスピードで移動する、という便利さや、それをコントロールするという他ではなかなか味わえない快感を与えてくれるアイテムのはずだ。だとすれば、まるでヒステリーのごときのこのエコ騒動ともいえそうな流れに晒されていると、そういう爆発エネルギーを甘受するのは悪である、というイメージがジワジワと刷り込まれる。

◆そしてそれはイコール、『クルマそっぽ』状態を作り出す状況にはまり込んでいるのではないか、ということだ。要するに、メーカーが自ら自分たちが送り出すクルマという媒体を、無責任にも、”実は悪いものです”とジワジワと大衆に刷り込みしていた、ということだ。無責任にも、である。もちろん、エコは大事。これには異論を挟む余地は皆無だ。しかし、それを自動車が売り物にしていることの矛盾に気付いてくれ、ということだ。

◆以前、「エアバッグ付き」を盛んに宣伝に使うクルマメーカーのCFが流行したことがあった。日産が最初という説があるが、最初がどこでもいいが、すべてのメーカーが「うちのクルマにはエアバッグが付いてます」とさも偉そうに(もしくはもったいぶって)言いまくった。だが、よく考えてほしい。「うちのクルマはタイヤが取れることはありません」とか、「当社の乗用車は、ハンドルを右に切っても左に曲がるようなトラブルや、いきなりブレーキペダルが折れるような問題は出ません」という宣伝は聞いたことがない。それは『あったり前のこと』だからだ。同じく、エアバッグも、安全のことを生産社である自動車メーカーが考えるのは当たり前。さらに同じく、エコも、考えて当然の義務、ということだ。

◆義務をあたかも売り物のように宣伝する。これを繰り返すのは、クルマを作っている方々(少なくとも宣伝を作っている方々)が、クルマの基本を分かっていないことを証明している。基本を分からず、エコを宣伝すれば、自らのクビを締めることになることもいたしかたなし? しかし、こんな基本的なことに気付かないマヌケなスパイラルに日本のメーカーが陥っているのなら、それは哀しむべきことだ。彼らが送り出すクルマがどうこう言う前に、感受性の無さと頭の悪さに。

◆クルマは、まずきちんと走ること。走って、気分をよくすること。それが第一義。もちろん、エコや安全は大切だが、「それは当社のテクノロジーを結集して徹底的に軽減します。それは当然の挑戦と思います」と胸を張って言う自動車メーカーに出てきてほしい。そして、「エコを尊重するために、効率のいい運転技術を磨いて、楽しいクルマを味わいましょう」と言えるメーカーが出んことを。ヤキが回った日本の状況では、かなり無理かもしれないが、クルマの楽しさを知っているみんなで、訴えていきたいと思う。

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うまく走りたければ、効率的なブレーキング能力を養うべし、と特別講師の国政さん。誰にでもできる簡単高効力の練習方法を聞いて、みんな、嬉しそうだった。


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