F1/モータースポーツ深堀サイト:山口正己責任編集

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バーレーンの報道で思うこと/An exaggerated report

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一見ものものしいけど、ほぼ素通り。前のR8もスルッと通過した。

NHK朝日新聞がニュースでバーレーンGPを取り上げた。もちろん、レースのことなんかそっちのけ。大筋は、”反対勢力が騒いで大変なことになっている”と思わせる内容だ。

◆どちらも、若干正しい報道からズレている。NHKのサイトの映像は、NHKらしく、落ちついたアナウンサーの声が事の重大性を加速するようで、現地にいるこちらは、あまりいい気持ちにはなれなかった。

◆そもそも、言葉は面白い。左脳と右脳が正確に存在を立証されているわけではないけれど、少なくもと、”事実認証”と”想像”というふたつの回路が人間の頭の中にあることは誰もが知っている。これをそのまま右脳と左脳に置き換えてみると、面白いことが見えてくる。

◆たとえば、”ものものしい警備”という言葉を聞いたとき、人は何は感じるか。左脳から入ったその言葉を右脳が受け取って、それぞれに”解釈”をするわけだが、たいていの人は、”大変なことになっている”と思うだろう。オレもそう感じて、ホテルを出るのが気が重かった。

◆しかし、メディアシャトルで約25分ほどの道のりを走っていて気がついた。”ものものしい”とか、”市内に検問所を設けて市民の移動を厳しく制限するなど、厳戒態勢を敷いています”というのは、事実と若干のズレがあった。

◆確かに、POLICEと書かれたランドクルーザーがあちらこちらに待機している。しかし、その数は、マナマの南側のホテルからザヒール・サーキットまでの間に、せいぜい20台。一度も検問もなく、あったとすればサーキットの数百m手前で、前で停められた一般車がトランクを開けられた程度だった。

◆そもそも、反対派は、政府に反対しているわけで、F1はその反対材料にしかすぎない。したがって、冷静に考えれば、その関係者がとばっちりを受けることは、よほどの理由がない限り考えられない。

◆ただし、反対派の動きが”ケンカ”と受け取ると若干ややこしくなる。坊主にくけりゃ袈裟まで、になるかもしれないからだ。

◆もうひとつの考え方がある。”ものものしい数のパトカー”という、左脳が受け取った言葉を右脳がどう解釈するか、だ。ある人は、”ものものしい数のパトカー”が出動しているということは、大変なことになっている、という解釈をするかもしれないが、”ものものしい数のパトカー”なら、護られているから安心だ、という解釈もある、ということだ。

◆途中で、2台の白バイに先導された、多分要人を乗せたクルマがまさに”ものものしく”シャトルバスを追い越して行った。周囲の一般車よりはるかに目立つ。なにもせずに普通に走れば、誰も気付かないのに、あえて”大事な人が乗ってます”と宣伝しながら走っているようだと思った。

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却って目立つ。

◆そうしたことを知ってかし知らずか、NHKはニュースの最後をこうまとめている。
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バーレーン政府としては、世界中に放映される自動車レースの最高峰F1の開催を通じて、事態が鎮静化に向かっていることをアピールしたい考えでしたが、F1の開催はかえって不安定な国内情勢をさらけ出す形となっています。
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◆ていねいな文体だが、”さらけ出す”というフレーズを選んだ原稿の執筆者の思考回路は、物事を正しく伝える能力に欠けていると思わざるを得ない。間違いなく、ある意図、それも冷静ではなく単なる想像による勝手な意図を感じる。

◆ずいぶん前に、勝慎太郎さんが、パンツの中にマリファナだかなにかを隠したという情報が流れたことがある。勝さんの実兄の若山富三郎さんが、会見を開いた。開いたというより、無理やり開かされたのではないかと思うが、その席上での若山さんの一言に、思わずイスから飛び上がって大拍手を贈った。

◆記者が質問する場面をテレビが映した。「弟さんが世間を騒がせていることに、責任を感じませんか?」。そもそも、弟とはいえいい大人というよりオッサンのことにガキじゃあるまいし責任なんかないって、と思って観ていたら、若山さんは、こう言った。「騒がせているって、テメェらが勝手に騒いでいるんじゃねェか」。痛快とはこういうことを言うのだと思った。思い出しただけで嬉しくなる。

◆簡単にF1をやめると、反対勢力に屈したことになる、という考え方もある。もちろん、自分の身の上や関係者のことも心配だが、ケンカではなく、話し合いで解決してほしいと思う。反対勢力の人も、ザヒール・サーキットに来て、バカバカしくも気分がよくなるF1を是非とも見物してほしいと思う。もちろん、NHKの方々にも。

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