遠い昔の思い出。
テストというより、ある種の”陰謀”で、トラちゃんの行く手は阻まれていた。
◆11年前のことである。トヨタがデビューした年に、どこかに書いたことをほじくり返して読んでみた。
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ポールリカールで、トラちゃんこと高木虎之介のトヨタF1初テストを見物した。TMGとTMC、本場欧州と日本に挟まれたドライバーの立場を感じて複雑だった。
翌日、同じくマシンに、トラちゃんのライバルとしてCARTチャンプカーシリーズを戦うクリスチャーノ・ダ・マッタが乗った。トラちゃんより約2秒速かった。
Tシャツ姿でトラちゃんのテストを見物、明日に備えるダ・マッタ。トラちゃんは笑っているが、心中穏やかではないはず。
コンマ3〜4秒の差なら、ドライバーの腕の差と言えるが、2秒はレーシングドライブでは天文学的な差だ。つまり、”条件”がまったく違った。2日目にはコース路面にタイヤラバーも乗ってグリップも向上する。そういう状況、ニュースを聞いた日本のファンやトヨタのお歴々は理解してあげられるのだろうか。
前日にアメリカから飛んできて、深夜12時までシート合わせ。翌朝7時にコースに集合だから時差ぼけ真っ盛り。さらには、マクラーレンやザウバー、アロウズも参加する
低速コースのモナコGP前の合同テストということで、普段殆ど使われないショートコースが使われた。トラちゃんがステアリングを握った初日は、路面コンディションは最悪、全然グリップしないからタイムは出ないのは当たり前だった。
その上、初体験のコースにもかかわらず、トラちゃんはほとんどノーミス。それ対して、トラちゃんのテストをゆっくり見物して翌日シートを交代したダ・マッタは、タイヤラバーがしっかり乗ったコースで何度もスピンした。トヨタ広報部からのレリースに、そこまで仔細な状況説明を望むべくもない。出るのはため息ばかりなり。
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◆当然の帰結として、ダ・マッタが翌年のドライバーに抜擢された。読み返して、またため息が出たm(_ _)m。