少年時代のブルース・マクラーレン
ブルース少年は、こうして夢を育んで、そしてそれを達成した。
素晴らしい写真を見つけた。この写真を見て、テレビのコマーシャルで、エコと減税とぶつからないクルマで一生懸命商売している場合じゃない、とつくづく思った。
幼い頃の刷り込みがいかに大切かを物語る写真である。マクラーレンのサイトに掲載されているマクラーレンの創始者ブルース・マクラーレンの幼年時代のヒトコマだ。
ボンネットに優勝カップを並べたクルマの脇に、嬉しそうなブルース少年が写っている。
こうして幼年時代に正しい刷り込みを受けてニュージーランドで育ったブルース少年は、やがて、アメリカで一世を風靡したCAN-AMシリーズやF1GPでタイトルを奪い、今年のマクラーレン・ホンダの基礎を作り上げた。
いま、この時点でクルマを売ることもメーカーにとっては大切だろうが、エコと減税とぶつからないクルマのコマーシャルを見て育った子供が大人になって、クルマに興味を持つとは到底思えない。むしろ、現在の多くのコマーシャルは、自分で自分のクビを締め、天に向かってツバをはく行為に等しいことに気づいてほしい。
大人になってから初めてモーターレーシングに触れて真摯に興味を持つパターンは存在する。ブリヂストンからフェラーリを渡り歩いた浜島裕英さんや、もう少し古い話でいけば、ホンダ第二期F1の桜井淑敏さんなどがその代表だ。
しかし、彼らが幼年時代に、エコと減税とぶつからないクルマではなく、クルマは夢のある存在として伝えられていたはずだ。
『いいクルマ』が、『売れればいいクルマ』ではなくて、本来の移動の楽しさをベースに持った存在として後世に伝えるために、自動車メーカーには、是非とももう一度、この基本的な問題を考えてほしいと思う。
ユーザーは、鉄の箱を買うのではなく、中に詰まった夢を買うのだから。
photo by McLAREN