F1/モータースポーツ深堀サイト:山口正己責任編集

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冬のオススメ

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一部で好評発売中の『双頭の夢  HONDA F1 魂のルーツ』のあとがきの最初に、オヤジに感謝の言葉を書いた。オヤジはクルマが好きだった。多くのクルマ好きと同じように、その影響でクルマが気になる存在になった。

幼少の頃、オヤジが運転する膝に抱かれてクルマに乗った。「ハンドルを持ってみろ」、というので、”お父ちゃんは手を離すからやだ”というと、「今日は絶〜対に離さないから」というのでこわごわハンドルを握ったら、「ホ〜ラ」と大笑いしながら手を離したので”オトーチャンのバカっ!!”と大騒ぎした。

オヤジはモーターファンを毎号(たぶん)買っていて、小学生/中学生の時代は、その本を押し入れの上から引っ張りだしてよく読んだ。どんな記事だった覚えていないけれど、モータースポーツの記事が好きだった。

高校時代に、鈴鹿の耐久レースをテレビで観ていた。スタート前に解説の田中健二郎さんが、「渡辺さん(実況アナの渡辺健太郎さん)ね、ドライバーはこういう時、エンジンがかかるかどうか心配なんです」。それを聞いたオヤジが、「随分ボロいエンジンを積んでるんだな」というので、ムッとして、”シビアだからそういうこともあるんだ!!”と反発したら、「シビアだったらすぐ掛かんなきゃダメだ」といわれて絶句した。悔しいけれどその通りだ。

いつだったか、ホンダの中村良夫さんと後藤治さんがオヤジが経営していたキャンプ場に遊びに来てくれた。オヤジに紹介したら、モーターボートのエンジンを自分でバラしたりしていたオヤジは、親近感を加速しようと思ったらしく、二人を前に「2サイクルは・・・・」と内燃機関の講釈を始めた。二人はニコニコに笑って聞いてくれていた。笑うしかなかったんだろう。

オヤジは創意工夫が得意技だった。モーターボートは、パワーがあるとプレーンする。持ち上がったノーズが、スピードをあげていくと水面に落ちて水の抵抗が少なくなってスピードが増す。これがプレーンだが、小さなエンジンでは、ノーズが持ち上がったままで、いつまでたってもプレーンしない。プレーンしないと、テール部分が深く水に沈んだ形で抵抗が大きいのでスピードが出ない。そこでオヤジは、ボートの後端部に木製のヒレを付けて、プレーンしやすくしたのだ。そこそこスピードが出るようになったそれを観て、息子は誇らしかった。

最初に買ってきたクルマは、私が小学校2年生の1960年頃だったと思う。夕方、クルマのエンジン音が家の庭に轟いて、ドアがバンとしまった後にオヤジがデッカイ声で、「お〜い、クルマ買ってきたぞ〜!!」と叫んだ。その声をいまでも覚えている。

「メッサーシュミットの設計図を積んだUボートが撃沈されなければ日本は戦争に勝った」と何度も言っていた”ドイツ信奉者”のオヤジが最初に選んだのは、コンソルというモスグリーンのクルマだった。

しばらくして、50km/h出すと凄い振動が出るコロナに乗り換えたので、たぶん、酷いクルマだったのだと思う。ご幼少の私が膝の上で「ホ〜ラ」とやられたのはこのコンソルだ。

1964年にVWビートルを新車購入して後生大事に14年間乗っていたが、私が免許を取って、隠してあるカギを見つけ出して乗りまわすようになってからトラブルが頻発するようになった。

近所を走り回って家に戻ると、クラックとブレーキの焼けた匂いがしていた。確か45馬力くらいしかなかったけれど、船で覚えたドリフトの練習台になった。ある時、筑波サーキットに走りに行って、タイヤが猛烈に磨耗しているのに気がついて、どうするか悩んだが、そのまま知らんふりしたm(_ _)m。

いまは相模原市に統合した神奈川県津久井郡で、バイクに最初に乗ったのは、大地主の祖父の9人兄弟の末っ子で可愛がられていたオヤジだったらしい。葬式の時に近所の人から、”正ちゃん(山口正治〜しょうじ)のバイクは、凄い音がしてたよ”と聞いて、エキパイを直管にして乗っていた、要するに暴走族のハシリだったことを知った。

2年浪人してやっと入った大学でパチンコと麻雀ばかりやっていて留年が決まった時、やっとのことでそれを伝えたら「人生は50年経たなきゃわからないもんだ」と言ってくれた。それからまだ50年経っていないので、まだ人生がわからないままだ。

ということで、そのオヤジに触発されて好きになった自動車レースの中枢であるF1グランプリの、さらに日本の根幹となったホンダF1第一期のことを伝える『双頭の夢  HONDA F1 魂のルーツ』。こたつの中で、どうぞ。

発行:三栄書房
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