ベテランカメラマンの進化
金子博と言えば、数年前にバーニー・エクレストンから終身パーマネントパスを贈られた日本人フォトグラファーとして知られる重鎮だ。先日の2017開幕戦のメルボルンで、「カメラマン部屋で2番目の年寄りになってしまいました」と泣きそうな声で仰る。
御歳63歳。年齢的体調からして、世界中を飛び回れるには大変なことは誰でも想像できるが、今回、実は初心者に戻ったじたいに遭遇した。白内障の手術をして初レースだったのだ。
しかし、手術は成功して、「ばっかみたいによく見えるようになった」というし、悩みは何かと思いきや、「いままで眼鏡していたから問題なかったんだけど、睫毛がファインダーに当たっちゃって」だって。たいしたことじゃない気もするけれど、プロにとっては大問題。新たな体験でもあるし。
睫毛が当たっちゃってさ。こんなこともプロには悩みってことで。
ところで、オリッピックに併せて4年に1回ニューモデルが出るのがカメラ業界らしい。彼らが使う機材は、ボディたけでかる〜く百万円を越える。当然、ニューモデルは、オートフォーカスの追従性など、すさまじく進化するので、古いモデルは使えないそうだ。
しかし、身体はニューモデルというわけにはいかない。むしろ、その分を機材で補う必要もある。
そもそもフォトグラファーは、フィルム時代に印刷会社がやっていた作業を、デジタルになって肩代わりする状況になり、撮影して終わりではなくなっている。仕事がきつくなったことに対しても、そうした新たな対応作業を覚えながらのチャレンジ。年寄りは辛いのである。
その昔、ライターとカメラマンの会話は、以下のようなものだった。
ライター「カメラマンはさ、写して終わりだからいいよね。オレたちは終わってから仕事だから」
カメラマン「オマエら、紙と鉛筆だけあればいいけど、オレたちは機材を担いで重労働なんだ」
いまでは、機材を担いで重労働の後に、カメラマン部屋で深夜まで修正作業。カメラマン家業は、楽ではないようで。
金子カメラマン、ますますのご活躍を!! あ、仲間のカメラマンと食事代を競うじゃんけんぽんGPも強くなってくださいね。
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