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逆転の発想

  1964年、インディ500を視察中の宗一郎さん。

◆第一期ホンダF1の監督だった中村さんから伺った本田宗一郎さんの話を思い出した。本田さんは絵が得意で、よく役員室でも休み時間に絵を描いていたらしい。ある時、「牛の耳と角、どっちが前にあるんだっけ?」。

◆こんな質問をする宗一郎さんの素朴さと、創始者としての厳しい顔の落差でますます宗一郎さんが好きになったのだが、宗一郎さんを語る逸話はいくらでもある。

◆研究所の社員が、3~4人寄り集まって頭をひねっているところに宗一郎さんが通り掛かった。宗一郎さんは、創始者であり、経営者だが、いつになっても研究所の現場が好きだった。

◆鳩首会談を覗き込んで、“何をやっているのだ”と宗一郎さん。
寄り集まって頭をひねっていたのは、オイルを回転部分に滴下するシステムのことだった。オイルを供給するアルミ製の管を近づけすぎると回転部分に当たって抵抗になってしまう。かといって隙間を空けてしまうとオイルが飛び散って無駄になる。

◆それを聞いた宗一郎さんは、「先っぽをゴムにしろ」と、瞬間的に言ったそうだ。ゴムにすれば、回転部分に当たったところが削れてピッタリになるからだ。社員は、目からウロコだった、という。

1986年オーストラリアGPのパドックで。

◆回転部分に当てないことで頭を悩ませていたところで、“当てて削ってしまう”という発想。この逆転の発想こそが宗一郎さんの真骨頂。

◆それを知ってからは、見習って、常に反対から考えてみるようにしている。けれど、反対が正解なことには、そうそう出逢えない。一緒の写真に映ったことはありますけどm(_~_)m。

photo by Honda / Ercole Colombo

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