チリの世界地図–島国だけではないゴーン事件の国際性・その1
日本の世界地図は日本が真ん中にあるけれど、世界的には極東の端っこだ、と思っていたら、チリの世界地図はひっくり返しらしい。世界の“常識”はぜんぜん違う、という視点で見たゴーン事件の行方。
その1 “国際的事件”の本質
◆25日20時すぎ、メリークリスマスの余韻の中に新たなニュースが届いた。ゴーン事件の新事実だ。
◆カルロス・ゴーンが、「サウジアラビア人の知人側からの請求書に基づき、販売促進費などの名目で約16億円を支出していたとみられることが25日、関係者への取材で分かった」(産経新聞)という。ゴーンの罪状がまた広がった。
◆最初にゴーン逮捕を知った時、瞬間的に、またか、と思った。いや、最近の自動車会社の不祥事がまた起きたと思ったことよりも、自動車関連の事件は、往々にして、自動車が日本の基幹産業であることを忘れた経済評論家が、テレビや新聞で、ピントのズレた論調で分かったように解説するのか、と思ったのだ。
◆そこで、クルマや自動車レースに造詣の深く、経済や法律に詳しい知り合いに訊いてみたら、この事件、興味深い展開になりそうなことが分かった。
◆まず、検察は凄腕で、全知全能をかけてゴーンの悪事を暴こうとしているが、問題は、事件とゴーンのポジションだという。つまりこれが、東京と大阪と名古屋の間で起きた事件なら問題ないが、国を跨いだ犯罪であることに、検察は手を焼くことになりそうな予感がする、という。ゴーンは、フランスとブラジルとレバノンに自宅があり、日本の法律だけで裁けない事態がいくつも想定できるのだ、と。
◆そして、最大の問題は、日本という極東の島国と欧米の思考回路に、大きな隔たりがあることが事態をややこしくし、さらにはゴーン一人の犯罪ではなく、“日本”という立場や思考回路が問われることに発展する可能性も考えられる、という懸念材料につながる。
◆“日本の常識世界の非常識”といわれたりする。逆も当然真なりだ。どれだけ完璧な通訳を介しても、ゴーンは「容疑」を理解できないのではないか。知り合いのTrapperちゃんの見立てはそうだった。
◆しかし、ビジネスジェットを降りたところで捜査官に囲まれた時に、ゴーン自身に思い当たる節があったに違いない。「日産の私物化」、「トップとしての絶対的権限」、このハザマを彼は常に行ったり来たりしていたはずだ。オランダ投資会社を設立して「投資」資金を注入。「投資」としてブラジル、レバノンに「投資用不動産」を購入して「自宅」として利用し、実態業務を行っていない姉に報酬を供与していた。
◆ところで、彼が乗っていたビジネスジェットの期待番号が興味深い。NI55AN。誰が見てもNISSANとすぐに分かる、まさにゴーンの公私混同を如実に伝えるものだったのだ。
(その2につづく)