リキさんのレーシング日本史 マイ・ワンダフル・サーキットⅡ

鈴鹿から世界へ

市販レーサー

「工場レーサーとか市販レーサーという名前は、ユーザーが勝手に呼び始めたもので、正規なジャンルとしてクラスがあるわけではありません。クラブ連盟(MCFAJ)は工場レーサーまがいの特殊車両排除のため、『レース出場車輌は、同一の性能&構造で50台以上市販しているもの』と規定して、以後、MFJのレースでも、これに準じたという経緯があります」

「したがって、“市販車”である以上、『公道走行可能な保安部品を完備し、運輸省(現国土交通省)が市販車認定をしたもの』が基本で、さらに、誰もが購入できるもの、というのがその定義となります」

「ホンダ『CR72』の場合、自動車ショー(現・東京モーターショー)での発表では、その価格が約50万円とされましたが、結局、《鈴鹿》でのレース以降も販売されず、幻の如く消え去りました」

「ちなみに、ヤマハ『TD1』の価格は40万円前後とされていましたが、実際に何台市販したかは不明です。『TD1』にしましても『CR72』でも、今の基準でいうならば、完全なレース車に無理矢理、ヘッドライト、ウインカーなどを取り付けて、公道を走れるスポーツ車の認定を取ってしまったのですから……果たして、市販レーサーといえるのかどうか?私感はありますね。ただ、当時は、それほど燃えた、ということでしょうか」(大久保力)